「長期資源変動と人間活動」

Long-Term Resource Fluctuation and Human Activities
ヒトがおよぼす影響

ウナギ科魚類のなかでも、とくに高緯度域に生息する種(ヨーロッパウナギ、アメリカウナギ、ニホンウナギ)は資源量が大きく減少しています。これらの種類は、食資源として高度に利用されており、産卵場と成育場の回遊距離が遠く、地球規模の気候変動や人間活動の影響に大きな影響をうけています。

北太平洋におけるサケ属魚類の漁獲量は長期的に増減をくり返し、その変動が気候レジームシフトと比較的よく対応しています。そのため、サケ属資源は気候変動によって増減を繰り返したと考えられることが多くなっています。

魚種別に漁獲量をみると、カラフトマスの漁獲量が最も多くなっています。しかし、カラフトマスが北太平洋で最も資源量が多いという訳ではありません。人間が漁獲しているのは、主に成熟した成魚です。カラフトマスの成熟年齢は2年であり、沖合域に分布する未成魚は1年魚の1つの年級群だけですが、サケの成熟年齢は4年魚が主体であるため、沖合域に分布するサケの未成魚は1年魚~3年魚までの3つの年級群が混在しています。卒業生の人数だけでは、小学校と中学校で全校生徒数は比較できません。

気候変動だけではなく、人間活動の歴史もサケ属魚類の増減とよく対応しています。1945年以前のサケ属漁獲量は日本が大きな割合を占めていましたが、カムチャツカなどのロシア領内での日本漁業が中心であり、これは日露戦争(1904~1905年)後にポーツマス条約によってロシア領内の漁業権益が得られたことに基づきます。しかし、1945年の第二次世界大戦敗戦に伴い、ロシア領内の漁業権益はすべて失われ、日本の漁獲量は激減しました。1950年代になると、日本のさけ・ます漁業は沖合域へと進出し、その漁獲量を回復させました。しかし、1977年以降になると国際的な漁獲規制の強化に伴い、日本の沖合漁業は徐々に衰退しました。沖合漁業が衰退する時期と一致して、沿岸域における漁獲量は増加に転じましたが、沖合で獲らなくなればその分だけ沿岸に来遊する資源は増えます。日本の沖合漁獲量の減少分だけで世界の沿岸漁獲量の増加分を説明することはできませんが、日本の沖合漁業は1970~1980年代に割当量(報告値)の3~8倍を獲っていたという指摘もあり、沿岸漁獲量の増加には沖獲り減少の影響も大きかったと考えられます。「日本のサケが他国に横取りされていませんか?」という質問を受けることがありますが、実は逆で、他国のサケを横取りしていたのは日本なのです。


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