「サケとウナギの回遊ルート」

Migratory Routes of Salmon and Eels
大きく育つために、大洋をこえて、川をのぼる

サケマス類の回遊ルートは、1950~1980年代にかけて大規模な標識放流によって詳しく調べられました。基本的には、春から夏にかけて北上し、秋から冬にかけて南下します。日本系のサケは、春季にはアラスカ湾を含む北太平洋東部に分布しますが、夏季には北緯60度以北を含むベーリング海に分布します。初夏に日本近海でも索餌(さくじ)回遊中のサケ(トキシラズと呼ばれる)は漁獲されますが、それらはアムール川などの極東ロシアを起源とするものです。サクラマスは太平洋側の沖合には回遊せず、主にオホーツク海と日本海で索餌回遊します。一方、カラフトマスには、太平洋を索餌回遊する系群と日本海を索餌回遊する系群の2つに分かれます。イワナ(アメマス)やイトウは、沖合域へ行かず沿岸域に留まって索餌します。ドリーバーデンはサケやカラフトマスのように沖合域を回遊することで知られており、ベーリング海や日本海の佐渡沖にも出現します。

ニホンウナギはマリアナ諸島の西方海域で産卵し、卵は約1日半でふ化します。ふ化した仔魚はレプトセファルスと呼ばれています。これは小さな頭という意味のラテン語で、かつてウナギとは異なる別の魚と考えられていたためこの呼称が残っています。柳の葉っぱのように平たい形をしたレプトセファルスは、約半年間、北赤道海流と黒潮によって運ばれます。約5〜6cmにまで成長すると黒潮内で変態して円筒形のシラスウナギとなり、冬に東アジアの沿岸域にたどり着き、河口に接岸したシラスウナギは、川を遡上(そじょう)します(海域や汽水域にとどまる個体(残留型)もいます)。ニホンウナギは、川で5〜10年間ほど生活し、秋頃に成熟が始まると「下りウナギ」となって海へくだります。下りウナギは、背側が黒く腹側は銀色になり、眼は大きくなって、歯や消化管は退化します。日周鉛直移動をしながら産卵回遊する過程で生殖腺は発達し、産卵場に戻って産卵します。


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