長距離遡上に自信あり
Oncorhynchus keta
- 日本で漁獲量が最も多く、古来より生活にも密接しているサケ科魚類。古くからふ化放流が行われている。語源は、身が裂け(さけ)やすいことから、身の赤色が酒(さけ)に酔ったようであることから、海から川へサカサマに上るところからなど(小学館・日本国語辞典第二版より)。産卵後に死亡した個体はホッチャレと呼ばれる。
- 日本における主な分布域は東北以北であるが、自然分布の南限は佐賀県の松浦川とされ、日本海側では山陰以東、太平洋側では関東の利根川以北で毎年遡上がみられる。
- 多くは初秋から晩秋にかけて川に遡上し産卵するが、厳冬期に遡上する後期群もあり、北海道の千歳川では正月をピークとして産卵する野生の冬サケがみられる。後期群には、鱗が剥がれやすい銀色の「ギラ」と呼ばれるタイプもまれにみられる。
- 稚魚は海に下った後、北太平洋を大きく回遊し、数年後に生まれた川に繁殖のために戻る(回遊ルート)。日本のサケは時空間的に母川回帰性が強く、自分が育った川に、自分の母親が産卵した時期に、戻ってくる。
- 障害物を乗り越えて遡上するジャンプ能力はサクラマスなどと比べると劣る。しかし、長距離を遡上する能力はサケ科の中で最も長けており、アラスカのユーコン川やロシアのアムール川では2500 km以上も遡上する。
- 鮭と酒の繋がり:サケは湧水がある場所を好んで産卵する。そのため、伏流水が湧出しやすい扇状地の端(扇端)にサケの産卵場が形成されやすい。そういった地形の場所には、古くから湧き水を利用してきた酒蔵があり、サケの産卵場の付近に酒蔵があることがしばしばある。たとえば、北海道の豊平川のサケ産卵場近くには千歳鶴、琴似発寒川のサケ産卵場近くには札幌酒精、徳富川のサケ産卵場近くには金滴酒造があり、それぞれ伏流水が醸造に用いられてきたという。
- 湧水があり、サケが産卵する沼として名づけられた「アキアジ沼」が北海道の錦多峰川や釧路湿原に知られる。
- 成魚の体長は50~90 cm、年齢は3~5年魚が主体、一回繁殖。産卵期は8月~翌年2月。別名として、シロザケ、アキアジ、オオメマス、トキシラズ、メヂカなど。英名はchum salmon。