日本一大きな絶滅危惧魚
Parahucho perryi (syn. Hucho perryi)
- ロシアの沿海地方(プリモルスキー)、サハリン、千島列島、北海道に分布する。かつては青森県の小川原湖にも多く生息し、明治時代には漁業としても利用されていた。現在、本州のイトウは絶滅したと考えられる。北海道においても、土地改良事業が急速に進み始めた1970年代以降に大幅に減少した。
- イトウの仲間では、本種だけが降海性をもち、北海道の沿岸域では漁業で混獲されることがある。
- 在来サケ科魚類の産卵期は基本的に秋が盛期であるが、イトウだけが例外的に春に産卵する。盛期は4月下旬~5月上旬(かつて青森県小川原湖に生息したイトウの産卵期は2~3月といわれる)。雄の婚姻色はあざやかで、頭部より後ろが赤くなり、水上からでも目立つ。
- 成魚の体長は1 mを超え、最大寿命は20年以上、体重は20~45 kgに達する。多回繁殖であるが、毎年連続して繁殖しない個体(スキップ産卵)も多いと考えられている。別名として、アイヌ語のオベライベ(オビラメ)とチライがあるが、アイヌ民族はオベライベ(阿寒湖と屈斜路湖に生息)とチライ(沿岸河川に生息)を区別しており、ミヤベイワナとオショロコマのような違いがあったのかもしれない。英名はSakhalin taimen。
- イトウは湿原の王者とも言われ、自然の氾濫原が残されている流域に多く生息する。特に、体長10㎝ほどの幼魚は氾濫原に形成される流れの緩やかな分流などに生息する。成魚は本流に生息しているが、産卵床の形成された本流において夏に浮上したイトウの稚魚は、秋頃になると氾濫原に多くみられる直接本流に注いでいる分流に入り、そこで幼魚期を過ごす。イトウは成長段階に応じて氾濫原に形成される様々な水域を横断的に利用している。