地球上でもっとも多様な脊椎動物
Salvelinus
- 北極をとりまくように最も高緯度に分布するサケ科魚類。
- 英名はチャー CharrもしくはChar。
- 生態的・形態的な変異に富み、種の分類は難しい。地球上で最も多様な脊椎動物といわれる。
- 種内の多型が有名。例えば、ホッキョクイワナArctic charr(Salvelinus alpinus)では、同じ湖にすむ同種でも、ベントス食やプランクトン食などの食性の異なる複数の生活型(モルフmorph)が存在する。
- 日本ではイワナは流れの速い川にすむイメージがあるが、世界のイワナ属は湖や沼にすむことが多い。日本のイワナ(S. leucomaenis)も、急勾配河川の落ち込みや巻き返しなど、それぞれの個体は流れがゆるやかな場所を好む(すみわけ)。
- 日本のイワナは、イワナ属の世界最南限に位置する。分布が隣接するオショロコマ(S. curilus)やドリーバーデン(S. malma)よりも、北米西海岸の中緯度に分布するブルトラウトBull trout(S. confluentus)の方が系統的には日本のイワナに近いらしい。かつて氷河期には同じ緯度帯で往来があったのだろうか。
参考文献 References
Klemetsen, A. 2013. The most variable vertebrate on Earth. Journal of Ichthyology, 53: 781–791.
Muir, A. M., M. J. Hansen, C. R. Bronte and C. C. Krueger. 2016. If Arctic charr Salvelinus alpinus is ‘the most diverse vertebrate’, what is the lake charr Salvelinus namaycush? Fish and Fisheries, 17: 1194–1207.