もっとも新しく分化したサケ科魚類
Oncorhynchus
- ベニザケSockeye salmon(Oncorhynchus nerka)、カラフトマスPink salmon(O. gorbuscha)、サケChum salmon(O. keta)、ギンザケCoho salmon(O. kisutsh)、マスノスケChinook salmon(O. tshawytscha)の5種は北太平洋周辺に広く分布し、古くから漁業に利用されてきた(長期資源変動と人間活動)。これらの5種にサクラマスMasu salmon(O. masou)を加えた6種がPacific salmonと呼ばれる。
- カラフトマスは、サケ科魚類のなかでもっとも新しく分化した種で、北太平洋における漁獲量も最も多い。なお、新しく分化した種というのは、もっとも優れた進化をとげたという意味ではない。カラフトマスの生活史は単純で、このような単純化した生活史は繁栄しやすい一方、絶滅もしやすいかもしれない(サケ科魚類には、絶滅種の化石も発掘されている)。
- カットスロートトラウトCutthroat trout(O. clarkii)は北米の西海岸のみに分布する。ニジマス(降海型=スチールヘッドSteelhead)(O. mykiss)もおもに北米の西海岸に分布するが、カムチャツカ半島の一部に飛び地的な分布(移殖ではない)がある。
- 日本には、おもにサケ、カラフトマス、そしてアジア固有のサクラマスの3種が分布する。
- 北海道にはベニザケが遡上する川(安平川など)もあるが、そのほとんどは人工的にふ化放流されたものである。もともと日本に生息したベニザケのなかまとして、陸封型のヒメマスとクニマスがいる。
- ギンザケとサクラマス(ヤマメ)は生態が似ており、幼魚の見た目も似ているが、ギンザケは背びれがやや長い。
- 川に遡上した産卵期の個体は、種による婚姻色があざやかだが(例えば、ベニザケ)、海で回遊する時期はいずれの種も銀色を帯びて似ており、見分けるのがむずかしい。海洋生活期に種を見わけるポイントは、尾びれの模様にある。