シンプルな生き方を選んだ種
Oncorhynchus gorbuscha
- 日本では、主にオホーツク海に流入する北海道北東部の川に遡上する。北海道南部や本州北部でも少数の遡上がみられ、青森県の老部川や岩手県の安家川では過去に恒常的な遡上が報告されている(注:岩手県ではカラフトマスの地方名がサクラマス)。
- 産卵期は8~10月で、一般にサケよりも早い。サケと異なり、カラフトマスは湧水がない場所で産卵する。
- 生まれた稚魚は夜間に浮上し、川でほとんど餌を食べることなく、数時間で海へ降下する。短時間の河川生活期のために、稚魚はパーマークをもたない。昼間の川で野生のカラフトマス稚魚をみかけることはほとんどない。
- カラフトマスの雄は二次性徴(鼻曲がり・盛りあがった背中)が顕著で特徴的だが、個体群(川)による変異もあり、二次性徴があまり発達しない個体群もある。
- カラフトマスは、ほぼすべての個体が満2年で成熟する(ごくまれに1年、3~4年)。そのため、同じ川に遡上するカラフトマスでも、偶数年と奇数年で遺伝的に個体群がわかれており、資源量は隔年で変動を示すことがある。
- 海と陸の生態系の繋がりが高く評価された知床世界自然遺産地域では、海から大量に遡上するカラフトマスが重要な要素であり、身はヒグマなどの餌となるほか、産み落とされた卵もオショロコマなどの重要な餌となっている。
- サケやサクラマスなどと比べると、母川回帰能力が低いとされる。ただし、北米で標識放流により推定されたカラフトマスの母川選択率は95%程度あり、母川回帰能力がない訳ではない。
- 日本周辺には、北太平洋を回遊する系群と日本海を回遊する系群の2系統があり(回遊ルート)、日本海系群は河川遡上時期が早い。そのため、日本海系群と太平洋系群が混在するサハリン南部などでは、来遊時期が二峰型になることもある。
- サケと比べると小型で身が柔らかく、市場価格も低いが、身やイクラは美味で通には好まれることも多い。近年では、オホーツクサーモンというブランド名でも流通している。かつては、日本海ます流し網漁業(2011年に消滅)で多くのカラフトマスが漁獲され、昭和後半には持ち帰り弁当店の「シャケ弁」として台頭した。
- 成魚の体長は40~70㎝、年齢は2年魚、一回繁殖。産卵期は8~10月。別名として、アオマス、サクラマスなど。英名はpink salmon。